日常性を凝縮した非日常の時間

 この度は、子カバキャンプにご参加いただきありがとうございました。昨年の第1回はCABA campと合同開催だったため、幼児(小学生も来てくれましたが)のみでの実施は実質初めてとなりました。

 個人的な思いとしては、キャンプには「日常性」を求めてプログラムを設計しています。日常性とは、ごはんを作って食べたり、自分の荷物を整理したりと「キャンプだから」することではなく、読んで字のごとく「日常生活でも」することを指しています。でも、今回のキャンプでは、日常性を凝縮した非日常性があったからこその場面がクリアに描き出されていたので、今回の私自身の振り返りにしたいと思います。

 

 さて、oranjeではいつも探究学習(自由研究)をしています。それは、この21世紀をたくましく生き抜く力をはぐくむのにマッチした学びだからです。その思いはカバキャンプのCABAにも込められています。

 探究学習や自由研究では、場・環境から飛び込むことからはじまります。考える対象が(お勉強的な)人がつくったものや考えたものではなく、目の前にある、あるがままのものや(自然物に限らない)自然だからです。場や環境に飛び込むと、あとはひたすらぶーらぶらする。一生懸命ぶーらぶらすると、なんとなく自分(自分たち)が考えたいもの、熱中したいもの、気になるものが出てきて、そしてそこからその対象の世界にどんどん入っていきます。まさに、日常性が凝縮された非日常です。

 

 そのようすは、探検家や芸術家のそれに似ているかもしれません。

 

 ところで。子カバキャンプではハイキングが恒例のチャレンジになっています(まだ2回だけど)。カバキャンプの登山やサイクリングの代わりになるものです。保護者の方から離れるだけでも冒険で、とにかく楽しい経験をもって帰ってもらおうという想いから、あまりにチャレンジングなプログラムは作っていません。プログラムを考えた当初、私の中でハイキングは、「ゆるいお散歩」くらいの位置づけでした。

 しかし!

 今回子どもたちのようすを見ていると、先に書いた探究学習のすがたそのものがあったのです。(半強制的に?笑)飛び込んだ世界で、まあ仕方なくも(?)一生懸命ぶーらぶらしてみると、すっごい興味をひくものがあった。子どもたちが見つけた興味の矛先は今回は「カニ」でした。さんざんつかまえた後、あれやこれやと実験(的に”いろいろ試す”活動)と観察を繰り返し、きっとそれぞれなりに「カニとは何か」をつかんで帰ったんじゃないかなと思っています。

 ハイキング(あるいは、散歩)みたいなことは案外日常生活でもしていることです。例えば毎日の通学は似ているかもしれません。でも、キャンプの中でプログラム化されたハイキングは通学とは違って、(通学だけじゃない)日常性がギュッと凝縮されていたのだと思います。

 そしてこのカニにまつわる一連の活動をする子どもたちのすがたを見てちょこっと安心しました。CABAの端っこはたしかにそこにある、と確認できたからです。

 

 CABA campは自立のためにチャレンジし、気づきをもってかえる(Challenge for Aliveness & Back home with Awareness)ことがコンセプトです。子カバキャンプでは、その種をまいてくれたらいいなあと思っています。そして自分ではまだまだ気づいていないかもしれないその種を、一冬しっかりと温めて、またCABA campで会いましょう。種が芽吹き、大きく育っていくすがたを見せてくれることをたのしみにしています。

 

2021.11.7

oranje代表・CABA camp統括

冨永 岳(トミー)