身体性の高い経験に詰まっていること

 第3回のカバキャンプはこれまでと少し違った緊張感がありました。正直に申し上げると、まずは、「子どもたちと深い関係性をつくれるか」、もう一つは、「『カバキャンプ』ではなく、日帰り遠足になってしまわないか」、の2つです。

 カバキャンプのコンセプトは「ジリツのためにチャレンジし、気づきをもって日常へ帰ること」です。今回の参加者に対して、どうすればこのコンセプトを達成してくれるか、どのような支援が適切か、事前のカバチームの打ち合わせではここを考えることがもっとも重要な仕事の一つになったと感じています。そしてチームとしてたどり着いた支援の指針は、参加者の異年齢を生かした「子どもたちに決定権を委ねること」でした。つまり、低年齢の子や体力の程度をお互いに把握し合い、そのうえでキャンプの進行を子どもたちに任せる、ということです。これは事前の交流会の子どもたちのようすから決めたことでもあります。

 

 さて、7時45分に出発予定のところ15分ほど早くoranjeを発った私たちは、出町柳で「はじまりの集い」をしました。今回のカバキャンプで「ちょっと大人になり、それに気づいてほしい」と伝え、そのために「みんなで決めてね」と確認し合ったのです。友だちどうしの参加もありましたが、それでも大多数はお互いに「はじめまして」の状態で、まずは名前を知り、「どんなひとなのか」を必死で探ろうとしている顔がとても印象的でした。

 改めてスタートを切って、私は後ろからようすを見るかたちで走行していましたが、間もなく子どもたちがお互いを気遣いながら進んでいくすがたがはっきりと見えたのです。これで冒頭の私の不安はほとんど解消されました。「先にある困難のたびにきっとそれぞれがCABAのタネを掴んでくれるだろう」とスッと力が抜けていったのです。

 全ての行程が終わり、「もっと遊びたい」想いを残して大原を後にする前に「少し変われたかな?」と尋ねると、出発前より「少し自信を持った顔つき」で「なったで!」と。一人ひとり詳しく聞けなかったことだけが唯一の心残りですが、きっと夕食は思い出話に花が咲き、早々に布団に入ったことでしょう。

 

 このコロナ禍にあって学ぶには、自ら動き、経験することが欠かせません。そして、その経験をじぶんのようすごと振り返るのです。「コロナ禍にあって」と言いましたが、「いまは」、です。21世紀も20年が過ぎ、学び方も変わろうとしています。その実態がどんなものかはなかなかわかりにくいですが、実は今回のキャンプにそれはあったのです。前向きに「場」に飛び込み、変わっていくことに気づくこと。それが新しい学びのすがたなのです。今回のキャンプで子どもたちが完全にその学びをものにしたとは思いませんが、きっとその道を知り、歩いてくれたことと思います。

 

 2020年は、予測外のこともあり少し予定を変更してキャンプを実施しました。私たちのキャンプにご理解いただきお子さまを送り出していただいた保護者の皆様には感謝申し上げます。そして、みなさんとはぜひともまたカバキャンプに出かけ、「新しい自分」に出会いたいと思うものです。

 

 当日1週間前に急な変更があったにもかかわらず対応してくれたチームにも感謝します。また、たくさんの子どもたちといっしょにCABAしましょう。

 

今回のキャンプが、全てのかかわった人たちにいつか、どこかで形を変えて活きてくれることを願っています。

 

2020.8.9

 

oranje代表・カバキャンプ統括 冨永 岳